欧州株式はユーロの急上昇を受けて下落していましたが、ここにきて戻り歩調です。欧州経済は幅広い分野で回復が確認されており、欧州株式の上昇に期待できそうです。通貨も目先は一服となる可能性が高いものの、中長期では一段高が期待できそうです。
図表1:欧州株式に投資するETF(上場投資信託)
取引 | チャート | コード | 銘柄 |
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EWG | iシェアーズ MSCI ドイツ ETF(EWG) | ||
IEV | iシェアーズ ヨーロッパ ETF(IEV) | ||
VGK | バンガード FTSE ヨーロッパETF(VGK) | ||
HEDJ | ウィズダムツリー ヨーロッパ ヘッジド エクイティ ファンド(HEDJ) | ||
HEZU | iシェアーズ 米ドルヘッジ MSCI ユーロゾーン ETF(HEZU) |
※当社WEBサイトをもとにSBI証券が作成
欧州株式は通貨ユーロの急上昇を受けて下落していましたが、ここにきて戻り歩調です(図表2)。
ユーロの対ドルレートは、政治リスクの後退や欧州中央銀行による金融政策正常化への期待を受けて17年5月頃から一貫して上昇、1.08ドル/ユーロ近傍から1.20ドル/ユーロ手前まで居どころを変えました。
ユーロ高は欧州輸出企業の収益を抑えることから、欧州株式は6月下旬から8月末にかけて下落が目立ちました。しかし、図表3の通り、一旦上昇一巡感が出やすい水準に達したと見られます。これを受けて欧州株式は戻りを試していると見られます。
欧州経済については、良好な推移が確認されています。前年比2.3%増となった4-6月期実質GDP、同3.2%増の7月鉱工業生産、同2.6%増の7月小売売上高、同5.6%増の8月新車登録台数など、経済指標は堅調です。また、図表4に示したユーロ圏の景況感指数は、上昇一途です。
また、欧州企業の業績は、ストックス・ヨーロッパ600指数ベースの予想EPSが、17年12月期の63%増に次いで18年12月期は9%増が見込まれています。17年12月期の予想EPSは5月末から8月末にかけてユーロ高を主因に2.2%下方修正されましたが、17年上半期の決算発表を経て通貨高の業績に対する影響は、十分に織り込みが進んだと考えられます。
これに対応する予想PERは15.9倍と、税制改正への期待で上昇が続く米国株式(S&P500指数)の予想PERが19.2倍に達しているのに対して割安感があると言えるでしょう。
米国株式は税制改正案で実現しそうな法人税率が明らかとなるまで上昇が続く可能性はありますが、これが織り込まれると一旦材料出尽くしとなる可能性がありそうです。そのタイミングで、米国株式から割安感の残る欧州株式へのシフトが想定されます。
さらに、欧州経済の堅調な先行きに対する信頼性が高いと考えられるポイントとして以下の3点を挙げることができます。
【1】欧州債務危機で12年〜13年にかけてマイナス成長に落ち込んだため、米国経済に比べて景気循環の局面が若い。
米国の景気拡大は8年に及び、トランプ大統領が主唱する経済刺激策が実現しないと先行きリセッションも懸念される状況です。一方、欧州の場合は景気の循環局面が若く、自然体でも経済拡大に期待できる点が注目できるでしょう。
【2】欧州経済の改善は失業率の低下による個人消費の回復が背景にあり、安定した改善が期待される。
個人消費の回復を背景とする成長は数億人の経済判断によるため、数千人の企業経営者の経済判断によって左右される企業部門が牽引する改善に比べて安定しており、外部からのショックにも強いと考えられます。
【3】欧州企業の投資残高が大きい新興国経済は減速基調から脱したと見られ後押しが期待される。
14年、15年と減速傾向であった新興国経済は、16年から改善基調が定着しているようです。中国経済に対する警戒もかなり後退しています。
以上より、欧州資産の見直しが進む可能性が高いと考えられ、図表1にリストアップした欧州株式に投資するETFに注目できるでしょう。
このうち、筆頭の「iシェアーズ MSCI ドイツ ETF」はドイツにのみ投資します。一方、「iシェアーズ ヨーロッパ ETF」と「バンガード FTSE ヨーロッパETF」はユーロ圏と英国の両方の株式に投資します。Brexitによる英国企業への悪影響が気になる方は、これを避けたほうがよいでしょう。
「ウィズダムツリー ヨーロッパ ヘッジド エクイティ ファンド」と「 iシェアーズ 米ドルヘッジ MSCI ユーロゾーン ETF」は、ユーロの対ドルの動きがヘッジされています。ユーロの対ドルレートは中長期でまだ上昇するとしても、当面は反落のリスクがあるのではと考える方には、これが良いでしょう。
また、欧州の資産に関して「今週の注目ETF」では、17年6月30日掲載の「ドラギ発言を受けてユーロが急上昇!!上値のメドは?」、17年5月26日掲載の「資金流入が加速する欧州株式市場」もご参考にしていただけるでしょう。
図表2:欧州株式が戻り歩調!
注:ドイツのDAX指数です。
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表3:ユーロの対ドルレートは、一旦達成感の出やすい水準か!?
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表4:ユーロ圏の景況感指数は安定した上昇が続く!
注:同景況感指数は欧州委員会の「企業・消費者調査」に基づいて、産業信頼感指数(40%)、サービス業信頼感指数(30%)、消費者信頼感指数(20%)、建設業信頼感指数(5%)、小売業信頼感指数(5%)などの指数で構成され、欧州の総合的な景況感を測る指標です。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成