先週はジョージア州の決選投票で民主党が上院2議席を獲得、大統領、議会上院、議会下院で主導権を握る「トリプルブルー」となったことで財政支出拡大への期待が高まって再び最高値を更新しました。今週はバイデン次期大統領による経済対策への期待、パウエルFRB議長の発言、JPモルガン主催のヘルスケアコンファレンスと家電見本市のCES、などが注目されます。
バイデン次期大統領の政策から恩恵が期待される銘柄として、iシェアーズ Globalクリーンエナジー ETF(ICLN)、 エンフェーズ エナジー(ENPH)、 マーチン マリエッタ マテリアルズ(MLM)、 ユナイテッド レンタルズ(URI)、 キャノピー グロース コーポレーション(CGC)を選んで今週の5銘柄といたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率(1/11(月)終値)
S&P500業種指数騰落 | 1週 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
エネルギー | 10.9% | 3.7% | 36.0% |
素材 | 6.8% | 8.4% | 15.2% |
金融 | 6.5% | 9.3% | 23.0% |
ヘルスケア | 4.4% | 5.9% | 8.9% |
資本財・サービス | 3.7% | 1.2% | 11.0% |
一般消費財・サービス | 3.0% | 5.3% | 5.3% |
S&P500 | 2.7% | 3.7% | 9.3% |
情報技術 | 1.3% | 4.5% | 7.8% |
公益事業 | 1.1% | 0.0% | -2.6% |
通信サービス | -0.5% | -1.7% | 9.5% |
生活必需品 | -0.8% | -1.1% | 1.1% |
不動産 | -0.9% | -2.6% | -4.6% |
騰落率上位(1週) | 騰落率 |
デュポン・ド・ヌムール | 19.4% |
ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス | 15.2% |
コノコフィリップス | 14.6% |
シュルンベルジェ | 13.8% |
エクソンモービル | 12.9% |
騰落率下位(1週) | 騰落率 |
コカ・コーラ | -4.9% |
ネットフリックス | -4.5% |
フェイスブック | -4.5% |
コストコホールセール | -4.2% |
クラフト・ハインツ | -4.0% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
1/4(月)はジョージア州の決選投票に対する警戒、COVID-19感染者数拡大の可能性が懸念されて大幅反落。1/5(火)はISM製造業景気指数の予想外の改善、サウジアラビアの減産表明を受けた原油価格の上昇のほか、前日の下落が過剰反応とみた押し目買いなどにより反発となりました。
1/6(水)はジョージア州の上院2議席とも民主党が獲得する見込みとなりましたが、イベント通過によって続伸となりました。民主党は財政支出に寛容なため、国債の増発が連想されて、米10年国債利回りが上昇し、テクノロジー株には売りが出ました。1/7(木)は、「トリプルブルー」となったバイデン政権の経済支援策への期待が高まり上昇、1/8(金)は予想外の雇用減少が経済対策の規模拡大を促すとして続伸しました。S&P500指数は週間で1.8%の上昇です。
業種指数では、サウジアラビアによる予想外の減産で原油価格が上昇して「エネルギー」がトップ、景気刺激策への期待で「素材」、長期金利上昇で「金融」も上位となりました。個別銘柄では、デュポン ド ヌムール(DD)が上昇率トップでした。景気敏感銘柄の代表として物色されているとみられます。
経済指標では、米国の12月ISM製造業景気指数が前月の57.5から60.7、ISM非製造業景気指数は前月の55.9から57.2へ、いずれも予想外の改善となりました。一方、12月雇用統計の非農業部門雇用者数は前月比14万人減少(予想は同5万人増)となり、COVID-19の感染拡大による行動制限の影響が顕著となっています。
今週の米国株式市場
バイデン次期大統領による経済対策への期待、パウエルFRB議長の発言、JPモルガン主催のヘルスケアコンファレンスと家電見本市のCES(コンシューマー・エレクトリック・ショー)などが注目されます。
なお、1/11(月)の米国株式市場はS&P500指数が0.7%、NYダウが0.3%、ナスダック指数が1.3%のそれぞれ下落でした。COVID-19に関して、英国ロンドンで制御不能になったとして「重大事態宣言」が発令され、日本で英国、南アフリカで見つかったものと異なる変異種が発見されたことなどがリスク要因として気にされた可能性がありそうです。
バイデン次期大統領は、1/8(金)に現金給付の拡大や地方政府への支援を含む数兆ドル規模の経済対策を策定する意向を表明、1/14(木)に詳細を公表するとしています。民主党が大統領、議会上院、議会下院で主導権を握る「トリプルブルー」(「トリプルスウィープ」「トリプルウェーブ」とも言われますが同じ内容です)となったことで、市場は政策が通りやすくなったバイデン次期大統領の発言により敏感になるでしょう。
パウエルFRB議長は、1/14(木)にプリンストン大学のファイナンス教授が主催するウェブ会議に出席します。「トリプルブルー」と、これを受けた長期金利の上昇(図表3)をどうとらえているか、その発言に注目が集まります。
JPモルガン主催のヘルスケアコンファレンスは、毎年この時期に開催され、主要なヘルスケア企業が参加します。COVID-19ワクチンの開発状況に関するアップデートが注目されます。オンライン開催となる家電見本市では、AMDやマイクロソフトによるプレゼンテーションに加え、EV関連のニュースも注目されます。
筆者は昨年11月のCOVID-19ワクチン開発成功のニュースを受けて、S&P500指数の21年予想EPSは190ポイント程度への上方修正がトップダウンで織り込まれ、PER20倍をかけた3,800ポイント、同21倍をかけた4,000ポイント程度への株価上昇が見込めるとしました。この軌道に乗っているとみられます。
経済指標では、1/14(木)に中国の12月貿易統計(輸出は前年比15.0%増、輸入は同5.4%増の予想)、1/15(金)に米国の12月小売売上高(前月比0.0%の予想)、1月ミシガン大学消費者マインド(前月の80.7から79.9に悪化の予想)、などの発表が予定されています。
企業決算では、ブラックロック、TSMC、デルタ航空、ウェルズファーゴ、JPモルガンチェース、シティグループなどの20年10-12月期決算の発表が予定されています。
今週の5銘柄
「トリプルブルー」の実現によりバイデン次期大統領の政策は議会を通過しやすくなったと考えられます。そこで今回は1/4(月)号に掲載した今年の注目投資テーマから、バイデン次期大統領の政策に関連するものを抜き出してご紹介いたします。
・クリーンエネルギー・・・バイデン次期大統領の看板政策です。iシェアーズ Globalクリーンエナジー ETF(ICLN)、エンフェーズ エナジー(ENPH)など。
・インフラ投資・・・ここ数年何回も裏切られましたが、「トリプルブルー」により財政面のサポートが期待されます。マーチン マリエッタ マテリアルズ(MLM)、ユナイテッド レンタルズ(URI)など。
・医療用大麻・・・民主党は大麻に寛容とされます。キャノピー グロース コーポレーション(CGC)など。
なお、これら5銘柄の年初来の株価上昇率は平均で15.3%、特に上昇が目立ったキャノピー グロース コーポレーション(CGC)は27.7%に達しています。短期的には過熱感のあるものも含まると思われますので、ご注意ください。
図表3 米10年国債利回り(日足、6ヵ月)
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
今週の注目銘柄
買付 | チャート | 銘柄 | 株価 (1/11) |
予想PER (倍) |
ポイント |
---|---|---|---|---|---|
iシェアーズ Globalクリーンエナジー ETF(ICLN) | 32.04ドル | - | 【クリーンエネルギーのETF】 ・ブラックロックが提供するクリーンエネルギー関連の銘柄をグローバルに組入れたETFです。米国企業が最大で資産の32%を占めるほか、中国の太陽光発電関連、欧州の風力発電関連などの銘柄が組入れられています。純資産額は47億ドルで、同種のETFでは最大です。 ・クリーンエネルギーに特化した企業は規模が小さいものが多く、関連する個別銘柄に投資する場合のリスクは高めと考えられます。そのため分散投資ができているETFを利用するのがオーソドックスな投資方法と言えるでしょう。過去1年で148%上昇していますが、2008年の設定来では依然マイナス25%で、クリーンエネルギーの投資テーマが19年までいかに「枯れていた」かがわかります。 | ||
エンフェーズ エナジー(ENPH) | 201.68ドル | 109.6 | 【太陽光パネルの価格下落、設置拡大から恩恵】 ・2006年にカリフォルニアで創業した家庭用の太陽光発電向けに直流を交流に変換する「マイクロ・インバータ」を主力製品とする企業です。マイクロ・インバータは、小型化することで個々の太陽光パネルの裏に取り付けることができるインバータで、従来の複数の太陽光パネルを束ねて一つのインバータで変換する方式に比べて発電パフォーマンスを効率化できるものです。 ・2008年の製品初出荷以来23百万個のマイクロ・インバータを出荷、太陽光パネルの設置増に伴って順調に売上を拡大しています。300個以上の特許を保有しており、技術力のある企業です。太陽光パネルは中国企業が参入して以来、価格が下落してパネルを生産している企業の業績は苦しいところが多くなっています。しかし、パネルの価格下落によって設置面積は拡大していることから、パネルの「補完財」を生産している企業には恩恵が期待され、同社はその代表と考えられます。 | ||
マーチン マリエッタ マテリアルズ(MLM) | 310.06ドル | 23.2 | 【建設骨材の大手】 ・米国南東部ノースカロライナ州に本社を置く、骨材(砂利、砕石)など建設資材を供給する企業です。南東部、南部、中西部を中心に26州およびカナダなどに事業展開しています。18年4月に同業のブルーグラスマテリアルズを16.3億ドルで買収、需要拡大に対応するために生産能力を拡張しました。 ・7-9月期の業績はCOVID-19による景気減速の影響を受けて売上が前年同期比7%減、一時利益を除く純利益が同3%減となっています。同社が中心としている10州では、人口の増加を背景にインフラ工事、非住宅建設市場とも基調は強く、経済活動が正常化すれば成長軌道に戻るとしています。米国のハイウェイの補修は十分でないところが多いとされ、インフラ投資の中心となる可能性が高いとみられます。 | ||
ユナイテッド レンタルズ(URI) | 257.45ドル | 15.2 | 【建機レンタルの最大手】 ・米国最大の建機レンタルの会社で、全米にネットワークを保有しています。架空リフト、空気圧縮機、圧縮機、コンクリート機器、地ならし機、フォークリフト、発電機などを提供しています。2019年の米国市場のシェアは13%で最大です。インフラ投資の政策が実現すれば、確実に恩恵を受けることができる企業と考えられます。 ・2020年の米国の非住宅建設市場はCOVID-19の影響もあって前年比8%減と弱い見通しで、同社の7-9月期売上も前年同期比13%減、営業利益は同16%減と落ち込んでいます。しかし、COVID-19の影響からの回復は予想を上回っていることから、通年ガイダンスを売上、利益とも下限を引き上げています。 | ||
キャノピー グロース コーポレーション(CGC) | 31.47ドル | - | 【医療用大麻の大手】 ・カナダのオンタリオに本社を置く、医療用大麻の製造会社です。2013年に創業、2014年4月に大麻の会社では北米初の公開企業となり、現在時価総額では世界最大です。18年10月にカナダで合法化された娯楽向けには「Tweed」のブランドで事業を展開しています。米国のアルコール飲料大手のコンステレーションブランズが39%を保有する最大株主となっています。 ・一般的に民主党は大麻の利用に寛容であることから、連邦レベルでの合法化が期待されています。昨年12月に民主党が過半を占める米下院では、大麻を合法化する法案を賛成多数で可決しています。当時米上院は共和党が過半であっため通過しなかったものの、今後は可能性が出てきたようです。ギャロップの世論調査では国民の68%が大麻の合法化を支持しているとされ、国民の意思が反映された結果と考えられます。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。使用した予想EPSの決算期はいずれも21年12月です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
11(月) | ・中国生産者・消費者物価指数(12月) | JPモルガン主催ヘルスケアコンファレンス(14日まで) 家電見本市CES開催(オンライン、14日まで) |
12(火) | ・米NFIB中小企業楽観指数(12月) | |
13(水) | ・日本工作機械受注(12月) ・ユーロ圏鉱工業生産(11月) ・米消費者物価指数(12月) |
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14(木) | ・日本機械受注(11月) ・中国貿易統計(12月) ・パウエルFRB議長がウェブ会議に出席(プリンストン大学主催) ・米新規失業保険申請件数(1月9日に終わる週) |
ペット関連企業ペトコ(Petco)の上場 ブラックロック、デルタ航空、TSMC |
15(金) | ・米生産者物価指数(12月) ・ニューヨーク連銀製造業景気指数(1月) ・米小売売上高(12月) ・ミシガン大学消費者マインド(1月、速報値) |
ウェルズファーゴ、JPモルガンチェース、シティグループ |
18(月) | ・中国実質GDP(10-12月期) ・中国鉱工業生産・小売売上高・固定資産投資(12月) ・中国調査失業率(12月) |
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19(火) | ・EU27ヵ国新車登録台数(12月) ・ドイツZEW景気調査(1月) |
ネットフリックス、バンクオブアメリカ、ゴールドマンサックス |
20(水) | ・NAHB住宅市場指数(1月) | プロクター&ギャンブル、ユナイテッドヘルスグループ モルガンスタンレー |
21(木) | ・日銀金融政策 ・日本貿易統計(12月) ・ECB主要政策金利 ・米住宅着工件数(12月) ・米住宅建設許可件数(12月) ・米新規失業保険申請件数(1月16日に終わる週) |
IBM、インテル、インチュイティブサージカル ユニオンパシフィック |
22(金) | ・じぶん銀行日本製造業PMI(1月) ・マークイットユーロ圏製造業PMI(1月) ・マークイット米製造業PMI(1月) ・米中古住宅販売件数(12月) |
シュルンベルジェ、スカイワークスソリューションズ |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1〜30位、青字のハイライトは31〜50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成