先週はCOVID-19向けワクチン開発のニュースが相次いで、経済回復への期待が高まって高値圏でのもみ合いが続きました。今週はCOVID-19の新規感染者数の動向に加え、本格化する4-6月期の決算発表、「財政の崖」に対応する景気刺激策の議論、COVID-19向けワクチン開発企業の公聴会などが注目されます。
今回は4-6月期決算発表の序盤の注目銘柄として、発表が終わったものから、モルガン スタンレー(MS)、ネットフリックス(NFLX)、ASML ホールディングス NYRS(ASML)、今週発表予定のものからマイクロソフト(MSFT)、テスラ(TSLA)を選んでご紹介いたします。
図表1 S&P500指数の一目均衡表(日足、3ヵ月)
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表2 業種別指数騰落率・個別銘柄騰落率
S&P500業種指数騰落 | 1週 | 1ヵ月 | 3ヵ月 |
資本財・サービス | 5.8% | 4.3% | 17.1% |
素材 | 5.4% | 9.3% | 24.8% |
ヘルスケア | 5.1% | 5.4% | 5.9% |
公益事業 | 4.2% | 5.9% | 3.5% |
エネルギー | 2.9% | -6.1% | 10.6% |
金融 | 2.0% | 0.3% | 8.9% |
生活必需品 | 1.9% | 4.2% | 3.6% |
S&P500 | 1.2% | 4.1% | 14.2% |
不動産 | 0.0% | -0.3% | 5.3% |
通信サービス | -0.9% | 3.8% | 16.8% |
情報技術 | -1.2% | 4.8% | 21.8% |
一般消費財・サービス | -1.6% | 6.5% | 21.4% |
騰落率上位(1週) | 騰落率 |
フォード・モーター | 11.5% |
ユニオン・パシフィック | 8.9% |
ハネウェルインターナショナル | 8.8% |
メドトロニック | 8.6% |
クラフト・ハインツ | 8.5% |
騰落率下位(1週) | 騰落率 |
ネットフリックス | -10.2% |
アマゾン・ドット・コム | -7.4% |
アドビ | -7.2% |
バンク・オブ・ニューヨーク・メロン | -5.9% |
セールスフォース・ドットコム | -5.6% |
注:個別銘柄の騰落率上位、下位はS&P100指数が母集団です。銘柄名はBloombergの表記により、当社WEBサイト・本文中の表記と異なる場合があります。
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先週の米国株式市場
13日(月)はカリフォルニア州でレストランの屋内営業を停止するなど経済活動の再規制が嫌気されて下落、14日(火)はモデルナ社ワクチンの後期治験の計画公表が好感されて反発、15日(水)はアストラゼネカ社のワクチンへの期待が高まって上昇しました。
16日(木)は中国本土株の大幅反落や雇用回復の鈍化を示唆する米指標を受けて下落、17日(金)は政府による景気刺激策への期待で反発しました。S&P500指数は週間で1.2%の上昇、一方、大手IT銘柄への利食いが目立ってナスダック指数は1.1%の下落でした。
業種指数では、ワクチン開発に関するニュースが相次いだことから経済回復への期待が高まり、景気敏感業種が上昇をリードしました。一方、これまでアウトパフォームが続いていた大手IT銘柄には利食いが目立ち、これらを含む「一般消費財・サービス」「情報技術」「通信サービス」が下落となっています。
個別銘柄では、経済回復への期待が台頭したことから、フォード モーター(F)が上昇率トップとなっています。大規模な経済ショックからの回復局面では、金額が大きい耐久消費財への需要回復が注目されるというセオリー通りの動きと言えるでしょう。
経済指標では、中国の6月貿易統計で輸出、輸入とも前年比プラスに転換、4-6月期GDPも前年比3.2%増とプラスに転換して市場予想の同2.5%増も上回りました。また、中国の6月鉱工業生産は前年比4.8%増で3ヵ月連続でプラスを維持、小売売上高は前年比1.8%減と市場予想を下回ったものの、前月の同2.8%減からは改善の動きが続いています。
米国の6月小売売上高は前月比7.5%増と同5.0%増の市場予想を上回り、前年比でも1.1%増とプラスに転換して、政府による支援策が効果を発揮していると言えるでしょう。
今週の米国株式市場
今週はCOVID-19の新規感染者数の動向に加え、本格化する4-6月期の決算発表、「財政の崖」に対応する景気刺激策の議論、7/21(火)のCOVID-19向けワクチン開発企業の公聴会などが注目されます。
米国のCOVID-19新規感染者数は、7/18(土)までの7日平均で6万4千人台と、7/11(土)の同5万3千人台からさらに増加、4月ピーク時の2倍以上のペースとなっています(図表3)。
いまのところ経済活動再開のペースを遅らせるなどの対応にとどまっているため市場の反応は限定的です。ただ、再びロックダウン(都市封鎖)に追い込まれる州が出てくる場合には、今後の経済指標の悪化が想定され、市場も反応せざるを得ないでしょう。
先週から始まった4-6月期の決算発表は、S&P500指数採用企業の9%が終え、うち73%の企業が市場予想のEPSを上回り、過去5年平均の72%をやや上回り、まずまずのスタートです。既発表企業のEPS合計では市場予想を6.3%上回っています。
米議会は独立記念日後の休会を経て再開されます。失業給付に週600ドル上乗せする時限措置が7月末に期限を迎える、いわゆる「財政の崖」に対応するための財政による景気刺激策の議論が盛り上がるか注目されます。
COVID-19向けワクチンに関する公聴会では、メルク、モデルナ、ファイザー、アストラゼネカ、ジョンソン&ジョンソンの代表者が証言する予定です。当事者から開発状況の説明を直接聞ける機会として注目されます。
経済指標では、7/22(水)に米国の6月中古住宅販売件数(前月比22.8%増の予想)、7/24(金)に米国の6月新築住宅販売件数(前月比3.6%増の予想)などの発表が予定されています。
企業決算では、IBM、コカ・コーラ、フィリップモリス、マイクロソフト、テスラ、AT&T、インテル、ベライゾンコミュニケーションズなどの発表が予定されています。
今週の5銘柄
今回は4-6月期決算発表の序盤の注目銘柄として、発表が終わったものからモルガン スタンレー(MS)、ネットフリックス(NFLX)、ASML ホールディングス NYRS(ASML)、今週発表予定のものからマイクロソフト(MSFT)、テスラ(TSLA)を選んでご紹介いたします。
図表3 米国のCOVID-19新規感染者数(7日移動平均)
※WHOデータをもとにSBI証券が作成
今週の注目銘柄
買付 | チャート | 銘柄 | 株価 (7/17) |
予想PER (倍) |
ポイント |
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モルガン スタンレー(MS) | 52.41 | 10.9 | 【トレーディングと投資銀行が予想以上の結果】 ・4-6月期決算は収益が前年同期比31%増、EPSが同66%増で、それぞれ市場予想を32%、79%上回って好調でした。COVID-19のパンデミックを受けて企業が資金調達を活発化、機関投資家もポートフォリオの入れ替えを行ったことから、予想以上の業績となりました。投資銀行は商業銀行大手のようにCOVID-19の影響が大きい個人向けの事業がなく、貸倒引当金の積み増しも相対的に小さいことが奏功しました。 ・投資銀行業務は、助言がM&A活動の低下を受けて減少したのものの、株式および債券の引き受け業務が拡大して前年同期比39%増でした。セールス&トレーディング業務は、債券が同2.7倍、株式も同23%増となり、全体で同68%増でした。 | ||
ネットフリックス(NFLX) | 492.99ドル | 74.9 | 【上半期の新規加入者は26百万件に達した】 ・4-6月期の新規加入者数が10百万人、上半期で26百万人に達し、巣ごもり消費の恩恵が最も大きい企業の1社と言えそうです。一方、7-9月期の新規加入者のガイダンスが2.5百万人と市場予想の5百万人を下回ったこと、4-6月期の実績EPSが市場予想を12%下回ったことから、決算発表を受けて7/17(金)の株価は6.5%下落しました。 ・しかし、新規加入者のガイダンスは、上半期に加入が前倒しになったことを考慮すれば、保守的な数字を出さざるを得なかったと考えられます。また、EPSについては前年同期比2.6倍になる中での予想ショートで、しかも、利益が急増している主因はCOVID-19の影響でコンテンツ作成費用が低水準となっていることです。ファンダメンタルズ的に悪いことが起こっているわけではなく、利食いが一巡すれば株価は上昇基調を取り戻すと期待できるでしょう。 | ||
ASML ホールディングス NYRS(ASML) | 383.59ドル | 45.7 | 【実績下振れも中長期の見通し変わらず】 ・半導体製造装置の露光装置で世界トップ企業です。4-6月期の売上が33.3億ユーロと市場予想の34.9億ユーロを下回り、また、受注額が11.0億ユーロと1-3月期の30.9億ドルを下回ったことから、決算発表を受けて株価は下落しました。COVID-19の影響や米国による中国企業に対する輸出規制などにより、足もとの事業環境には不透明要因もあるようです。 ・一方、7-9月期の売上ガイダンスは36〜38億ユーロと市場予想の33.8億ユーロを上回り、通年で130億ユーロの売上ガイダンスは維持されました。また、25年にかけて年間売上が150〜240億ユーロの可能性があるとの見方も変えていません。最先端のEUV露光装置を製造できる唯一のメーカーであることから、中長期の成長見通しには変化がないと考えられます。 | ||
マイクロソフト(MSFT) | 202.88ドル | 23.2 | 【業績鈍化に対する市場の反応が注目される】 ・7/22(水)に発表予定の4-6月期決算は、売上が365億ドルの前年同期比8%増、EPSが1.38ドルの同1%増と、それぞれ1-3月期の同15%増、同23%増から伸びが鈍化する予想となっています。COVID-19の影響による打撃が相対的に小さいとして、株価は1-3月期決算発表後に15%の上昇となっているため、市場の反応が注目されます。 ・COVID-19の影響は、中小企業からのソフトウェアのライセンス収入、ビジネス向けSNSのリンクトイン事業、ネット検索広告などにマイナスの一方、テレワークの拡大によりクラウド関連事業にはプラスとなっていると想定されます。ただ、プラスとマイナスの両方が複雑に入り組んでいるため、全体としてどうなっているかは予想が難しくなっています。 | ||
テスラ(TSLA) | 1500.84ドル | 310.1 | 【4-6月期は4四半期ぶりに赤字となる予想】 ・4-6月期の決算は、COVID-19の影響を受けて売上が50.9億ドルで前年同期比20%減、EPSが0.35ドルの赤字で前年同期の1.65ドルの赤字からは改善するものの、4四半期ぶりに赤字転換となる見通しです。 ・同社のコンセンサス予想EPSは20年12月期が4.84ドル、21年12月期が11.99ドルで、7/17(金)終値1,500.84ドルはそれぞれ310倍、125倍に相当します。株価はファンダメンタルズ面から説明が難しい水準まで上昇しているため、一時的要因とは言え赤字決算に対してどのような反応となるか注意が必要でしょう。 |
注:予想PERはBloomberg集計のコンセンサス予想EPSによります。マイクロソフトは21年6月期、その他20年12月期です。
※会社資料、BloombergデータをもとにSBI証券が作成
主要イベントの予定
経済指標・イベント | 企業決算・イベント | |
20(月) | ・日本貿易統計(6月) | IBM |
21(火) | ・ワクチン開発企業の公聴会(下院エネルギー・商業委員会) ・シカゴ連銀全米活動指数(6月) |
コカ・コーラ、フィリップモリス、インチュイティブサージカル ロッキードマーチン、テキサスインスツルメンツ ユナイテッドエアラインズ |
22(水) | ・銀行製造業PMI(6月) ・米中古住宅販売件数(6月) |
マイクロソフト、テスラ、バイオジェン、アラインテクノロジー |
23(木) | ・米新規失業保険申請件数(6月) ・ユーロ圏消費者信頼感(7月) |
AT&T、インテル、ツイッター、ダウ、ニューコア |
24(金) | ・マークイットユーロ圏製造業PMI(7月) ・米新築住宅販売件数(6月) |
ベライゾンコミュニケーションズ、アメリカンエキスプレス |
27(月) | ・中国工業部門利益(6月) ・ドイツIFO企業景況感指数(7月) ・米耐久財受注(6月) |
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28(火) | ・米S&Pコアロジック住宅価格(5月) ・米コンファレンスボード消費者信頼感(7月) |
マクドナルド、3M、アルトリアグループ、ビザ AMD、スターバックス、アムジェン、DRホートン マーチンマリエッタマテリアルズ |
29(水) | ・米中古住宅販売成約(6月) ・米FOMC政策金利 |
ボーイング、フェイスブック、ビヨンドミート(E) ゼネラルエレクトリック、グラクソスミスクライン ペイパルホールディングス、クアルコム |
30(木) | ・ユーロ圏景況感(7月) ・米実質GDP(4-6月期、速報値) |
アップル、アマゾンドットコム、ギリアドサイエンシズ アルファベット、P&G、ロイヤルダッチシェル エマージェントバイオソリューションズ、クラフトハインツ マスターカード、ザイリンクス、エレクトロニックアーツ |
31(金) | ・日本鉱工業生産(6月) ・中国製造業・非製造業PMI(7月) ・ユーロ圏実質GDP(4-6月期、速報値) ・ユーロ圏消費者物価指数(7月) ・米個人所得・個人支出(6月) ・米PCEコアデフレータ(6月) ・米ミシガン大学消費者マインド(7月、確報値) |
エクソンモービル、アッヴィ、ブリティッシュアメリカンタバコ ズームインフォテクノロジーズ、メルク、キャタピラー |
注:日付は現地時間によります。(E)はBloombergによる予想を示します。企業決算の赤字でのハイライトは、当社顧客保有人数の1〜30位、青字のハイライトは31〜50位を示します。
※Bloombergデータ、各種報道をもとにSBI証券が作成
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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