6月も下旬を迎え、1年の折り返し点が近づいています。6/19（火）には今年最大規模の大型上場といわれるメルカリ（4385）が東証マザーズ市場に上場し、終値での時価総額は7,173億円となりました。これを契機に新興株市場に注目が集まることが期待できるのではないでしょうか。

先週は新興株市場から東証1部への昇格をテーマに、好パフォーマンスが期待できそうな銘柄を探ってみましたが、今週は2018年に入ってから新興市場に上場した銘柄を検証し、今後の出世株候補を探ってみました。

• ※図1・図2ともに当社チャートツールを用いてSBI証券が作成

• ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成

• ※表1・表2はBloombergデータをもとにSBI証券が作成。騰落率は6/19（火）終値と6/12（火）終値の比較による

2018年上半期（1/1〜6/19）に東証マザーズ市場および東証JASDAQ市場に新規上場した銘柄は、表3に見るように22社ありました。このうち、6/19に上場したメルカリ（4385）を除く21銘柄のうち、現在の株価（6/19終値）が上場日終値を上回っているのが5銘柄、下回っているのが16銘柄となっています。現在の株価が上場日終値を下回る銘柄が多い理由は、上場当初の株式の需給がタイトな時期に人気化するケースが多く、その後は反動で下げやすいことに加え、新興株式相場全体が軟調だったためと考えられます。

時価総額で見ると、メルカリは別格として、インターネットで低価格な印刷を仲介するラクスル（4384）、将棋のAIソフトで有名なHEROZ（4382）、事務作業を代替するロボットアウトソーシングのRPAホールディングス（6572）などが500億円超の評価を得ています。

• ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。騰落率は6/19（火）終値と上場日終値の比較による。なお、上場日に買い気配で値が付かずに、後日取引が成立した場合は、その終値を対象にしました。表３はあくまでも客観的データを示すために作成された表であり、銘柄の推奨は意図していません。

表4は2018年上半期（1/1〜6/19）に東証マザーズ市場および東証JASDAQ市場に新規上場した銘柄のうち、現在の株価が上場日の終値を上回っている5銘柄を値上がり率が高い順に並べたものです。ラクスル（4384）はまだ上場して間もない銘柄ですが、それ以外の4銘柄は投資家の認知度が徐々に高まり、評価されてきた銘柄といえるのではないでしょうか。

共通点としては今期の会社側業績予想が大幅な増益予想となっていることです。また、ユニークなビジネスモデルを有しニッチ市場でトップクラスのシェアを有している企業が多いことも指摘できるように思います。それでは、この5銘柄について簡単にご紹介していきましょう。

ファイバーゲート（9450）は、2000年に札幌で創業、機器製造から電気通信サービスまで手がける独立系のWi-fiソリューション企業です。全国規模のWi-fi（公衆無線LAN）事業者は11社程度ありますが、殆どが携帯電話キャリアや航空会社系企業で、自社の本業のサービスの補完的役割にとどまっており、いわゆる独立系、専業業者は同社のみです。マンションやアパート向けのレジデンシャルWi-fi事業が主力で、観光地や商業施設、法人ネットワークなどのフリーWi-fi 事業も伸びています。Wi-fi自体の普及率（全戸一括型マンションISP加入件数）はマンションで5％未満と見られ、今後導入が拡大する余地は大きいと見られます。

SOU（9270）は、2011年に創業、ブランド品や骨董品の買取り、販売会社です。社長の嵜本氏は元ガンバ大阪所属のJリーガーです。同業にコメ兵（2780）や大黒屋HD（6993）などがありますが、同社の販売先は消費者ではなく、大半が自社によるオークションを中心とするルートで同業他社への販売である点が特徴です。利益率が高いうえ、オークションの落札率が95％と高いため、在庫リスクも軽減されるビジネスモデルです。買取店舗網の拡大に加え、専用アプリの「miney」を開発している点が注目されます。

ラクスル（4384）は、インターネットでの印刷物の注文仲介事業が主力の会社です。小口印刷物を早く、安く納品して欲しいニーズと、夜間など印刷機械が遊休している時間を活用したい印刷業者を仲介する新しいビジネスモデルです。顧客の集客支援や運送仲介業務も手がけています。印刷ビジネスは、顧客層の拡大で成長が続いています。また、配送仲介も宅配便の値上げが追い風となって今後の成長が期待できます。

ブティックス（9272）は、介護ビジネス業界のEコマース事業（介護用品の販売）会社として設立しましたが、2015年に開始した介護業界の展示会事業が成功。ほぼ同時に開始した介護業者のM&Aビジネスも軌道に乗り始めてきています。展示会事業は東京、大阪でそれぞれ年1回開催（東京はビッグサイト）、今年より福岡でも開催する予定です。展示会事業は、介護用品事業者からブースの出店費用をもらうビジネスモデルです。来場者は一般の消費者相手ではなく、介護会社の経営者、購買担当者、現場スタッフなどに限定されます。現場には商談スペースが広めに準備されていて、来場者と出品者がすぐ商談に移れるメリットがあります。M&Aビジネスはデータベースを元に買い手に豊富な案件を紹介できるメリットがあります。全国には21万の介護業者がいますが、廃業率は年間6.3％と高く市場規模は大きいと思われます。

ビープラッツ（4381）は、MVNO（仮想移動体通信業者）へのサービス提供を行っている会社です。具体的にはモバイル回線利用者の契約管理、発行するSIMの在庫管理や発行済SIMの管理、モバイル回線利用料の請求などの各種バックオフィス管理機能です。またモバイル回線利用者からのサービス申込みを受付ける為のストアフロント、モバイル回線利用者が利用するマイページ機能（契約や請求内容を確認するためのサイト）なども提供しています。

マーケットへ戻る